林家ぼたんさん―3


「高座も打ち上げも、来た人みんなで明るく、楽しく――これが林家一門のカラーです」
――ご自身で落語会を仕切るのは大変では?
ぼたん 自分の会に世話人を立てるのは苦手なんです。勉強会は続けないと意味がないから、持ち出しになっても続けますけど、世話人さんを立てると、赤字だからやめたほうがいいかなと思ったり、頼みづらいベテラン噺家をゲストに呼べと言われたり、いろいろ負担になってくるじゃないですか。自分で仕切っている分には全部自分の責任だから、いいんですけど。
 ただ会をやっているだけでは人は来ないし、有名な人を呼んで、宣伝にお金をかければ来るっていうものでもないから、やはり世話人さんって大変だと思います。
 価格設定も難しいんですよ。無料の会をやると、どうしても「何やってんのぉ? タダなんでしょ?」みたいな態度の人も入って来るんです。今は無料の地域イベントがすごく多くて、何でもタダが当たり前で、形のないものには対価を払いたくない人が増えているように感じますね。不景気っていうのもあるでしょうけど。でも、そういう人がいると、「あの会は客層が悪い」と本当に落語が聴きたいお客さんの足が遠のいてしまうこともありますから。
 マナーをさりげなく教えることも大事だと思うから、演目の途中で席を立たないでとか、始まったら携帯で写真を撮らないでとか、最初に言いますよ。電源の切り方がわからないご年配者には「ちょっとおかあさん、電話出して。今切ってあげますから」って、切り方を教えるくらいまでやります。
――思い入れのあるネタはありますか?
ぼたん 「辰巳の辻占」(たつみのつじうら)や「お見立て」など、噺に出てくる悪い女が好きですね。高座にはあまりかけませんけど。廓噺をネタ出しすると、「女のクセになんでそん
林家ぼたん なネタをやるんだ!」とクレームがきたりするんですよ。女流だとこういう弊害はありますね。
――ぼたんさんの廓噺も聴きたいお客さんはたくさんいるでしょう。一部の心ない人のせいでストップがかかるのは本当に残念です。
ぼたん それでも女性の先輩方が頑張ったから、私たちも今こうしてやっていられるんですよ。女流は聴きたくないっていうんだったら、それも好みですから。ご年配で昔から落語を聴いている方は女性がやっていること自体、理解できない、変だと思ってもそれは仕方のないことだと思うんですよ。そういう方に無理に聴いてもらおうとは思いませんし。若い世代はこういう先入観を持っている人は少ないですから、いずれはクリアできる問題だと私は思っているんです。
――一方で、女性の噺家さんが増えると、女性だからと注目を浴びることは少なくなりそうです。
ぼたん 人数が増えれば、お客さんにも「そういうものだ」と、自然に受け入れてもらえるようになっていくんじゃないでしょうか。狭い社会で潰し合っても仕方ないですから、自分が嫌だったことは絶対に後輩にしないようにして悪い風習は断ち切って、それぞれがいい面を伸ばしていけるような環境をつくっていければいいですよね。続き

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