柳家右太楼さん―4


「噺に”今”を入れることはしないですね。 古典落語の力を信じているので」
――では、これからもずっと古典落語で?
右太楼 古典落語が好きだし、古典落語の力を信じてるので。生活は変わっても、人間の心情はそれほど変わってないと思うんですよ。志ん輔師匠は「昔ながらのクスグリを変えるやつがいるけど、ギャグが古いんじゃなくて、腕がないんだ」という言い方をされていました。落語は一言、一言が生きていて、重みがあるし、そんなに変えなくてもいいと思うんですよね。将来は「今」を入れていかないと、伝わらなくなるかもしれませんけど。
――「必殺仕事人」は、どちらかというと若い世代がターゲットの時代劇だと思うんですが、「両個」(りゃんこ、※9)という台詞や、「でえご、でえご(大根)」っていう物売りの声が出てきたりしていました。若い人も昔の言葉にそんなに引っかからないで見ていたようですから、落語もやり方次第かなという気もします。
右太楼 落語にはまったのは、時代劇が好きだったこともあるんです。「遠山の金さん」や、
小朝師匠(※10)が出演されていた「三匹が斬る」が好きでしたね。(江戸風俗は)「鬼平犯科帳」が一番リアルかもしれません。僕の「鹿政談」の奉行のイメージは吉右衛門さん(※11)の鬼平や、松方弘樹さんの(遠山の)金さんを参考にしているんですよ。
――今後やりたいことは?
右太楼 前座のとき、師匠に「上手やうまいは噺家には褒め言葉じゃない。面白かった、が最高の褒め言葉なんだ」と言われたことがあるんです。僕は「うまい」と言われるのがいい噺家だと思ってたんで、うちの師匠に弟子入りしなかったら、独りよがりの落語をやってたかもしれません。
 今は「いいね」「うまいね」の先を模索しているところです。やはり目の前のお客さんが笑ってくれるとうれしいから、先を見据えて落語をやっていくのはなかなか難しいんですが。
 手ごろな会場があれば、そろそろ地元で一人会も始めたいと思っているんです。

※9 刀を2本(両個)差している武士を小バカにしていう言葉。二本差。
※10 春風亭小朝。1955年生まれ。五代目春風亭柳朝門下。
※11 二代目中村吉右衛門。1944年生まれ。歌舞伎役者。



柳家右太楼
profile
柳家右太楼(やなぎや うたろう)
本名:中島康貴(なかしま やすたか)。 1977年3月14日 、岐阜県岐阜市生まれ。2000年11月、柳家権太楼に入門。前座名「さん太」。2004年7月二つ目に昇進「右太楼」に改名。2015年3月に真打昇進、柳家燕弥に改名。落語協会の定席のほか、首都圏や出身地の岐阜を中心に独演会、落語会に出演中。
公式HP→柳家燕弥Website


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