古今亭駒次さん―3


「圓丈師匠に『新作をどんどん書きなさい』と声をかけていただいて勇気を得ました」
――駒次さんは新作のイメージが強いんですが、始めたのはいつごろ?
駒次 学生のときから新作は好きでした。特に圓丈師匠(※12)が好きで。4年の文化祭で「金明竹」と、初めて書いた新作やりました。友人や現代美術の先生に無理やり聴かせましたが、全然ウケなかった。「金名竹」のほうは、まあ笑ってくれましたけど。
――入門後は前座のときから新作を?
駒次 圓丈師匠の会に呼んでいただいたとき、高座にかけてました。「プークの会」(※13)で後片付けしてたとき、圓丈師匠に「きみは新作書けるから、どんどん書きなさい」と声をかけていただいたことがあるんです。圓丈師匠は新作の神様みたいな人ですから、相当うれしかったし、励みになりましたね。これに勇気を得て、どんどん書くようになったんです。
――志ん駒師匠は新作はされませんよね。新作は誰にも稽古つけてもらわずに?
駒次 そうです。兄さんがアドバイスしてくれることもありますし(※14)。でも、お客さんの反応が一番勉強になるんですよ、やっぱり。自分の勉強会でウケても、ほかでは全然ウケないっての、けっこうあるんです。だから、新作はどんどん変えていかないとダメなんですよね。
――新作を創るときの苦労はありますか?
駒次 稽古する時間がないんですよね。高座の前の日にできたりするんで。(自分で書いてるから)古典よりは覚えやすいけど、古典と同じように稽古しなきゃいけないんですよ。
――新作は創ろうと思ってできますか?
駒次 あたしはもう、創ろうと思って創ってます。必要に迫られて。
――新作ネタはいくつぐらいあるんですか?
駒次 書いたのは相当あるんですけど、今でも高座にかけるのは5本ぐらいですね。(新作やる人は)みんな、一つ一つのネタにそんなに思い入れはない
と思うんですよ。ウケた噺をやってるだけで。なかには、思い入れがあるネタもありますよ、「バッハの肖像」とか。でも、そういうのに限ってあんまり受けない。
――どんなネタですか?
駒次 あたしの好きな中田有紀というアナウンサーをモデルにしたSっ気溢れる女の子と、不良の男子(実はM)の中学生2人が、夜の校舎に忍び込むっていう。 好きなネタなんで、よくやっちゃうんですが、お客さんにはあんまり受け入れられてない感じがします。やっぱり、ウケたからやってるっていうネタが多いですよね。「鉄道戦国絵巻」も、創ったときは誰も笑わないと思いましたもん。自分の趣味だけだなと。
――でも、鉄道マニアじゃなくても楽しめますよ。
駒次 ギリギリのところですね。東京以外はダメです。固有名詞っつーのは、知らない人にとっては出ただけでダメなんですよ。だから、自分で鉄道ネタ創っといて何ですが、楽屋ネタは絶対やらないです。噺家のネタやれば、多少聴き込んでるお客さんは喜ぶに決まっているんですけど、やらないようにしてます。
 ほんとは古典みたいにどこ行ってもウケる、場所を選ばない噺をつくりたいんですけどね。今んとこ、できてないだけで。もともとマニアックなものを目指しているわけではないんです。
――マニアックにならざるを得ないところもあるのでは?
駒次 そこが面白さでもありますけどね、新作の。でも、みんなにウケるのが一番いいんですよね。
――今の時代、それは無理じゃないですか?
駒次 それでも、そこを目指していかないと。マニアックすぎると世界が広がらないと思うんですよ。
――普段、落語を聴かない人でも面白いのが一番いいんでしょうけど。
駒次 なかなか難しいですよ、「言うは易し」で。マニアックな落語すら難しいんだから。  →続き


古今亭駒次

※12 三代目三遊亭圓丈。1944年、愛知県生まれ。落語協会監事
※13 新宿南口のプーク人形劇場で行われている新作落語の会
※14 「鉄道戦国絵巻」の新幹線のキャラを、柳家小ゑん師匠と春風亭百栄師匠のアドバイスで公家キャラに変更。




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