――駒次さんは新作のイメージが強いんですが、始めたのはいつごろ? 駒次 学生のときから新作は好きでした。特に圓丈師匠(※12)が好きで。4年の文化祭で「金明竹」と、初めて書いた新作やりました。友人や現代美術の先生に無理やり聴かせましたが、全然ウケなかった。「金名竹」のほうは、まあ笑ってくれましたけど。 ――入門後は前座のときから新作を? 駒次 圓丈師匠の会に呼んでいただいたとき、高座にかけてました。「プークの会」(※13)で後片付けしてたとき、圓丈師匠に「きみは新作書けるから、どんどん書きなさい」と声をかけていただいたことがあるんです。圓丈師匠は新作の神様みたいな人ですから、相当うれしかったし、励みになりましたね。これに勇気を得て、どんどん書くようになったんです。 ――志ん駒師匠は新作はされませんよね。新作は誰にも稽古つけてもらわずに? 駒次 そうです。兄さんがアドバイスしてくれることもありますし(※14)。でも、お客さんの反応が一番勉強になるんですよ、やっぱり。自分の勉強会でウケても、ほかでは全然ウケないっての、けっこうあるんです。だから、新作はどんどん変えていかないとダメなんですよね。 ――新作を創るときの苦労はありますか? 駒次 稽古する時間がないんですよね。高座の前の日にできたりするんで。(自分で書いてるから)古典よりは覚えやすいけど、古典と同じように稽古しなきゃいけないんですよ。 ――新作は創ろうと思ってできますか? 駒次 あたしはもう、創ろうと思って創ってます。必要に迫られて。 ――新作ネタはいくつぐらいあるんですか? 駒次 書いたのは相当あるんですけど、今でも高座にかけるのは5本ぐらいですね。(新作やる人は)みんな、一つ一つのネタにそんなに思い入れはない |
と思うんですよ。ウケた噺をやってるだけで。なかには、思い入れがあるネタもありますよ、「バッハの肖像」とか。でも、そういうのに限ってあんまり受けない。 ――どんなネタですか? 駒次 あたしの好きな中田有紀というアナウンサーをモデルにしたSっ気溢れる女の子と、不良の男子(実はM)の中学生2人が、夜の校舎に忍び込むっていう。 好きなネタなんで、よくやっちゃうんですが、お客さんにはあんまり受け入れられてない感じがします。やっぱり、ウケたからやってるっていうネタが多いですよね。「鉄道戦国絵巻」も、創ったときは誰も笑わないと思いましたもん。自分の趣味だけだなと。 ――でも、鉄道マニアじゃなくても楽しめますよ。 駒次 ギリギリのところですね。東京以外はダメです。固有名詞っつーのは、知らない人にとっては出ただけでダメなんですよ。だから、自分で鉄道ネタ創っといて何ですが、楽屋ネタは絶対やらないです。噺家のネタやれば、多少聴き込んでるお客さんは喜ぶに決まっているんですけど、やらないようにしてます。 ほんとは古典みたいにどこ行ってもウケる、場所を選ばない噺をつくりたいんですけどね。今んとこ、できてないだけで。もともとマニアックなものを目指しているわけではないんです。 ――マニアックにならざるを得ないところもあるのでは? 駒次 そこが面白さでもありますけどね、新作の。でも、みんなにウケるのが一番いいんですよね。 ――今の時代、それは無理じゃないですか? 駒次 それでも、そこを目指していかないと。マニアックすぎると世界が広がらないと思うんですよ。 ――普段、落語を聴かない人でも面白いのが一番いいんでしょうけど。 駒次 なかなか難しいですよ、「言うは易し」で。マニアックな落語すら難しいんだから。 →続き |
※12 三代目三遊亭圓丈。1944年、愛知県生まれ。落語協会監事 |
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